経理仕組家masaのブログ

【映画評】「蘇る金狼」(大藪春彦原作/松田優作主演)

masaです。今回ご紹介するのは1979年公開の角川映画「蘇る金狼」です。

前回ご紹介した「聖の青春」は、角川映画40周年記念作品のひとつらしいです。2016年夏に、新宿の角川シネマで往年の角川作品を観ました。「犬神家の一族」「Wの悲劇」と、ともに知ってる作品で、懐かしい感じがしました。

松田優作のアクション作品も最も好きな作品

 

松田優作主演のアクション映画には、同じ角川映画で「野獣死すべし」があります。映画としてのインパクトはこの作品の方が強いようにも思えますね。

優作は役作りのために奥歯を抜いた、カメラが自分の顔を撮っているときは、常に瞼を開けっ放しで演技した、

といったエピソードが作品自体の評価にプラスされて語られることが多い。

でも、masaは「蘇る金狼」を松田優作のアクション映画作品の最上位におきます。

「蘇る金狼」では、松田優作の真骨頂ともいうべき、「走るシーン」の美しさが堪能できるからです。

走るといえば、TVの「太陽に吠えろ」が有名で、もちろん、優作も走っていたと思います。

優作の美しい走りは、刑事ものに見られるまっすぐ走るものよりは、敵の銃弾をかいくぐりながらの、

前傾した、、まるで豹のようなしなやかな走りです。

黒のツナギ服が包んでいる日本人離れした長い手足は、典型的な日本人体形(武田鉄矢に近い)masaにとって、

妬ましい以外の何物でもなかった。

 

TV「探偵物語」は高校生時代の思い出

 

本作のあとに制作された、日本テレビで「探偵物語」という優作主演のコミカル風味の探偵ドラマが

1980年代に放映されました。

優作と共演陣との、どことなくユーモラスな、とぼけた感じのやりとりが、シリアス調の刑事ものには

ない面白味があり、一部は録画して何度も見た記憶があります。

オープニング、クロージングが英語の歌詞でカッコイイのも、優作のいでたちもオシャレなのも、

共演の女優陣もよかったですが、なんといっても、優作と刑事役との絡みは最高でしたね。

優作の初体験は、映画や、「なんじゃこりゃー」でおなじみの「太陽に吠えろ」ではなく、この

「探偵物語」だったように記憶します。

そのあとで、おそらくtvで観た、ハードボイルド小説の映画化「蘇る金狼」で、

キレキレのアクションや、恫喝する優作に初めて対峙したことになります。

 

共演陣も素晴らしい!音楽も素晴らしい!

 

話を映画に戻します。

ヒロインの風吹ジュンは何度もDVDで見返しても魅力を感じる。

優作演じる主人公が勤める会社で不正経営に携わる者たち陣を演じている

佐藤慶、成田三樹夫、小池朝雄、岸田森といった

名優が脇を固めています。

アクション俳優としては優作より先輩で、この分野のパイオニアといっていい、

千葉真一が出演していますが、優作と千葉氏の絡みは、

追いかけっこだけで直接対決がないのがちょっと残念です。

 

原作は、本格的なハードボイルド作で、笑いの要素など1ミリもありません。

ところが、映画では、優作や共演陣が、随所でおとぼけ風味を出しているのが興味深いです。

優作が警備員に「ヒゲ剃っておけよ」と声をかけるのはアドリブに違いない。

岸田森演じる不正経営陣に雇われた私立探偵が、「ギャラ高いよ~」と言ったり。どこがハードボイルドだよ。

極め付けは、この探偵が優作の銃弾を浴びて後ろに吹っ飛ばされるときにセットが壊れないため、

自らぶち破るという、これ、なんでOKなの?ハードボイルドにギャグがおもいっきり混じっとる!

経理部長を演じる成田三樹夫のおとぼけなんて、凄まじく面白いのです!

ヤクザ映画に数多く出演もしていた強面の俳優ですが、コミカルな演技が顔に似合わず最高!

 

経理部長成田三樹夫と、小池朝雄演じる経理次長とで責任をなすりつけあいが最高!

佐藤慶演ずる社長も被害者面を決め込むなか、優作演じる主人公が一同に向かい恫喝するシーンです。

なすりつけ合いのおとぼけを一掃する優作のドスの聞いた声で、経営陣はビビッてしまう。

名優 成田三樹夫は、「探偵物語」で刑事役で出演し、優作とコミカルな絡みを絶妙に繰り広げる

のですが、本作のその布石があったとは言いすぎでしょうか。

 

主題歌の歌い手は誰かずっと気になっていた

 

主題歌の歌手が誰か気になってました。日本人にはない歌唱力のように思えたからです

前野曜子という人で、数年前に亡くなっていたことを最近知り、知り、ショックでした。

英語の歌詞の歌もありますが、それも彼女だったと同時に知り、てっきり外国人の歌手と思い込んでいたので

さらに驚きました。

 

 

まとめ 松田優作の最終出演作もアクション映画だった

 

優作は、「野獣死すべし」の後、アクション映画から離れます。

「家族ゲーム」もいい作品と思いますが、他に純文学をモチーフにした作品にも

出演しており、masが無関心だった優作の非アクションにも名演は多くあるはずです。

優作は、最期に「ブラックレイン」という作品でサトーという殺し屋を演じます。

その鬼気迫る演技は、「蘇る金狼」の頃に勝るとも劣らないものがあります。

病魔に蝕まれながらの出演だったと後に知ることになるわけですが、

39歳という短い生涯で、私たちに鮮烈な記憶を残してくれたレジェンドです。

作品づくりに真剣な裏返しとして、スタッフとの衝突が絶えなかったとも聞きます。

彼の太く短い人生に、リスペクトするしかありません。