鬼経理百の掟 其之拾四「属人性の排除」

masaです。「属人性の排除」について。どうして業務は属人的になってしまうのか?そうならないようにするにはどうしたらいいのか?について書きます。

属人化する理由

1.メンバ間にスキル・業務知識に格差がある

スキルの高い者に業務が流れ込みます。高スキル者は、裁く速度が早いので、さらに格差が増幅する。経理だと、会計基準、金商法、会社法、税法の前提知識がより多い者に難易度の高い業務が集中する。EXCELマクロを組める者がマクロを大量生産し、他のメンバはメンテできず盲目的に依存する。

2.「抱え込み」特性を有する者がいる

他者に説明したくない、説明能力が弱い、他者に(仕事を振ることで)嫌がれたくない、ダメ出しが苦手、自己の存在価値を担保したいこういう心理特性を持った者が業務を抱え込み、周囲が何もできずにいる。

3.人材の流動性が高い

後入先出傾向にある(後から入社した者が先に退職する)職場では、せっかく後輩部下に振った業務が逆流し、結果として古くからいる社員に業務がへばりつく。

属人化排除の対策

1.強制的にローテーションをかける

同一業務を5年以上継続して行わないように経理責任者が決める。統制上も有益。業務と人名のマトリクスをつくり、継続担当年数を年度末に棚卸する。特に、送金・納税処理は遅延が致命的ダメージを生むため、実行可能者を複数人用意する(3名以上、現行のオペが可能であること)

2.手順書作成、他者へのスキルトランスファー、部門のスキル・リテラシー水準向上への貢献について高く評価する

業務範囲や成果、協調性などの情意性と同等以上にフォーカスすることで、高スキル者のモチベを高める。

3.管理者が部員のキャリア・パスのモデルを提示できるようにしておく

管理者が短期志向では、部員のモチベを長期的に支えられないため、居心地が悪いとすぐに退職してしまう。5年ぐらい先の見通しが部員と管理者で構築してみる。

結果の保証はないが、勤続年数を長くする効果は期待できる。

これらは全て管理者の責任です。上しか見てない管理者は、こういう足元のマネジメントを怠っています。3.までは期待薄ですが、1.を整備していないのは管理者として有罪。上記は、事業規模、業務フローや外部業者の利用度、システム化の程度にもよりますが、おおむね部員5名以上を想定します

そこまで部員数がいない場合はどうするか?

上記1に示した、代替者の確保(主担以外に2名以上)が困難な、部員総数2名以下の場合は、2名が交互にチェックしあったり、いつでも業務を代行しあえるようにしておく

管理者が自らオペレーションできるようにしておく(遅延が許されない業務)
代行業者に依頼する

今は、代行業者が多いので、うまく活用することで、正社員が少ないままでも十分に業務を回すことができます。ただし、代行業者の品質をチェックできなければ、結局は代行業者依存になってしまいます。

ABOUTこの記事をかいた人

1965年生まれ 会計士試験に5回挑戦後、会計事務所に就職、現在は一般企業の経理職を20年と経理一筋に生きてきた、さすらいの会計人(びと)。 会計で社会の未来を変えることを信じている。 内向的な性格を損だと思って生きてきたが、今では独自の世界観を築くことができた(と自分では思っている)のはひたすら自己に向き合ってきたからだと確信している。 音楽は高校時代から聞き始めたモダンジャズ一筋、手塚治虫の漫画やスティーブ・マクイーン、最近はダニエル・クレイグに憧れている。