シニア経理マンmasaです。2020年12月15日の日本経済新聞朝刊の記事の一部をご紹介します。
「電子請求書に国際規格 企業間 完全移行へ22年10月導入」
電子請求書の仕様統一に期待されること
記事の一部を抜粋要約します。
企業間でやりとりする請求書の完全なデジタル化をめぐり、政府と会計ソフト会社など約70社が国際標準規格を導入する。
2022年10月をめどにサービスを開始し、2023年度中に日本全体での普及を目指す。
企業間でやりとりする請求書の仕様の統一に向け、業界や企業の垣根を超えた議論を進めるとのこと。
オーストラリア等30カ国以上で利用されている「ペポル」と呼ばれる標準規格を採用する。
やりとりしている双方の事業者がペポルのネットワークに接続した会計ソフトを使っていれば
請求書は完全なデジタル化を実現できる。
ここで、「完全なデジタル化」というのがミソ。
発行する側、受け取る側の双方がデジタル化に対応し、仕様が統一されていれば、
従来の紙ベースでのやりとりにあった、郵送のタイムラグ、目チェック・手入力による
転記ミス、転記漏れ・重複が避けられます。
電子請求のメリットとは?
![](https://masahiroishii.com/wp-content/uploads/2020/12/請求書.jpg)
紙ベースの請求書発行プロセスを整理してみると、
①担当者が請求書作成(WORDなど)し印刷
②責任者が承認し、請求書に押印
③総務部が社印(角印)を押印
④担当者がスキャンしてPDFファイルを作成
⑤担当者が顧客にPDF添付メールを送信
⑥担当者が原本を郵送、控えをファイリング
④、⑤は、実務上よくあるケースです。郵送によるタイムラグ
を嫌う顧客が、とりいそぎスキャンデータで内容確認等を進めるために
PDFを送信させる。
この工程のうち、発送側の電子化による事務面のメリットとして、
1.「印刷」をしなくてよい
用紙代の節約の他、プリンタの紙詰まり等のロスタイムがなくなる
自社控えのファイリングも不要となる。
2.「押印」が不要となる
電子印鑑に切り替えることで、押捺の手間を削減できる。
3.「郵送」が省略できること
郵送料、封筒、送り状が不要となる。
4.「入力時間」の削減、「入力ミス」を回避できること
社内システムや他の紙ベースの台帳類を見ながら、WORDなどの
アプリに品目、数量、納品日、発注NO.などを手入力する際のミスが
なくなるor最小化される。
システム内に請求書生成機能が備わっていれば、納品データから請求
書作成モジュールにデータ転送させることで手入力の時間、ミスを
回避できる。
社内承認者のチェックも、事務ミスのチェックに終始していた状態から
実質面のチェックに専念できる。
電子請求書導入時の注意点
![](https://masahiroishii.com/wp-content/uploads/2020/12/印鑑.jpg)
EDI(電子商取引)システムを活用するのがベターです。一気に
移行できない場合であっても、以下のような点に配慮すべきです。
1.セキュリティの確保
受け取った側の改ざんが簡単にできるWORDファイル等をそのまま
添付してメール送信するのは、NG。
せめて改ざんがしにくいPDFで送信する
2.契約、納品の書類も電子化を検討
請求に併せて、受注時、納品時に提出する書面についても電子化を
セットで検討すべき。
3.捺印の廃止or電子化の検討
押印のために印刷するのでは、従来の紙ベースのまま。
思い切ってすべての押印をやめる。それが難しければ電子印鑑を
導入する。
なお、社印(角印)は、法的には不要なのですが、
商慣習上、求められることもあるので、電子印鑑に切り替えるのが
ベター
まとめ
請求書の電子化は、発送側のメリットだけでなく受け取る側でもメリットが
あるため、積極的に導入するモチベーションが高いといえます。
事務面でのメリットもさることながら、紙を扱うことの気遣いやリスクを
なくし、本来行うべき実質的なチェックに工数・人員を割くべきです。
・そもそも、当初の合意に即しているか?
・請求内容、納品成果物の妥当性は?
・正当な請求タイミングか?
そして、後回しになりやすい、二重派遣、下請法違反などのリーガル
チェックも。
検算や誤植チェックだけしかしないスタッフは用済みになる時代が来ます。