「経費精算システム導入に先立ち注意点3つを解説」鬼経理の掟その33

シニア経理マンmasaです。久々の投稿です。今回は「経費精算」という経理にとって避けられない業務について。

 

経費業務のコスパが悪い理由

経費精算(社員が立て替えた経費の精算)業務は、経理部門の主要業務の一つです。

其の中で経理にとって最もコスパの悪い業務といえます。理由は、1件当たりの処理の手間(時間)当たりの

計上金額(決算書上の)が他の科目に比べ圧倒的に低いということです。

1人の社員が移動で利用したタクシー数百円、それしかなければ1件の申請となりますから。

コスパが悪い要因を掘り下げると、

1.パターンが多い:使用目的の分類、精算方法の多様化など

2.ミスや遅延が不規則、不連続に発生する:効率的に裁けない

3.申請書類の受渡し、保管:搬送時の紛失、保管スペース確保

4.重複入力:申請者がexcelに入力→経理がそれ見てシステムに入力

上記のうち、特に4.がシステム導入のメリットとしてわかりやすいところ。

 

 

システムで全てが解決できるという思い込みは危険

そこで、コスパを上げる、人手依存から脱却するためにシステム導入を検討します。

IT展示会などでベンダーのブースに立ち寄り、各社のウリ文句を聞き続けていると、

この中のどれかを導入すれば、問題の全てが解決できるかも、期待が膨らみます。

ちょっと待った!

システム導入しても満足度は100%にはなりませんよ!

理由その1:コスパを厳密に求めすぎる(経営側)。経理周りのインフラ投資に

経営層は「投資する以上は全て問題解消するんだろうな」と凄む。営業周りと

異なり、コスパの測定は難しいため、そもそも満足水準を設定できない。

理由その2:現状の運用フローをそっくり反映させるという思惑(経理部)。

そうすれば転記集計の手間が省けて経理にはプラスの効果しかないため。

申請者(現業、営業)のニーズがないがしろにされがち。全体最適になりずらい。

理由その3:システムは最大公約数で標準装備されるため。ユーザの要望は

一律ではない。業種・業態・規模はもちろんのこと、

DNAレベル(経営方針、風土)でも経費精算フローへの要求は異なる。

完全オーダーメイド出ない限り、ベンダーは全ユーザの要求に応えられる

仕様を実装しているわけではない。あくまで標準装備。

いくつかのオプションも用意はしているだろうが、限定的なはず。

欲を書いてカストマイズを多く要求すれば、導入コストが跳ね上がる

経費精算システム導入に先立ち、注意点3つ

さて、経費精算の効率化のために市販の経費精算システム(アプリ)を導入する

に先立ち、考えておいたほうがよいことを3つ。

1.キャッシュレス化(の検討)

申請者と経理の入力処理の二度手間を回避するのと同時に、精算金額の手渡しは

止めて、社員の口座に振り込むことに変更するのがベターです。

出納業務の手間削減、現金受渡し時のリスク回避になります。

仮払も廃止が望ましい。クレジットカード利用でたいていは大丈夫なので。

さらに社員への振込も省力化(ファームバンク)することも有益。

システム導入をきっかけに上記が実現すれば確実に全社最適につながる。

2.解決したい課題の最も重要な点にフォーカスする

欲をかいてアレもコレも、となりがち。

もちろん、課題1つだけで満足しろとは言いませんし、どの製品でも

2つ以上の目的達成を目指して問題ないわけですが、

課題を分析し、もっとも重要なもの(1つに絞れなければ2~3つ)

が確実に解決に向かうことを精査しなければなりません。

10個の課題がなんとなく解決した、よりも、10個のうち数個は

あきらめたが、最も大事なものは確実に解決した。

のほうが効率が高い投資と言えるのは明白。

製品の相見積もりに精を出しがちですが、課題の十分な吟味こそが

重要。

3.システム導入ですべてが自動化するわけではない

仮にAI機能を実装していたとしても、無人化できるいう思い込みはなくすべき。

1.例外を100%排除できない

会社によりますが、システムで全パターンを網羅できない可能性があります。

システムに会社のルールを合わせるつもりでいても、どうしてもこれは残し

たいという例外処理は出てきます。導入を決めた役員から出ることも・・・。

スマホ持ってない社員にアプリをどう使わせるか?なども。AIでは解決しきれない

ことがどうしても出てきます。

2.正当性の検証は人(経理部員)の目で行わざるを得ない。

経費精算は、社員による不正の温床の一つと言えます。入力の効率化が実現

しても、申請書類の記載と領収書類との照合、不審な支出内容(支払先)でないか

など、正当性を検証し、最終承認するのはシステム(AI)ではなく経理部員です。

AIが「この取引には疑問があります」とアラートを出してくれるようにでき

はしても、最後は人(経理部員)の確認が不可避です。

ABOUTこの記事をかいた人

1965年生まれ 会計士試験に5回挑戦後、会計事務所に就職、現在は一般企業の経理職を20年と経理一筋に生きてきた、さすらいの会計人(びと)。 会計で社会の未来を変えることを信じている。 内向的な性格を損だと思って生きてきたが、今では独自の世界観を築くことができた(と自分では思っている)のはひたすら自己に向き合ってきたからだと確信している。 音楽は高校時代から聞き始めたモダンジャズ一筋、手塚治虫の漫画やスティーブ・マクイーン、最近はダニエル・クレイグに憧れている。