経理ひとすじ50代男masaです。2016年の流行語大賞「神ってる」とはプロ野球の広島東洋カープの鈴木誠也選手のことですが、カープOBで彼より「神ってる」人を紹介します。高橋慶彦氏です。
「赤き哲学」
NHK BS放送で「球辞苑」という番組があり、「スイッチヒッター」という回で慶彦氏はゲスト出演しました。
スイッチヒッターとは、左打ち、右打ちを使い分けるバッターのことです。野球の走塁は反時計周りのため、一塁に近い左打者の方が有利なため、右打ちの野手が後付けで左打ちを習得することがあります。
慶彦氏は、2014年に「赤き哲学」という自伝本を出版します。同じ年にTBSの「サンデーモーニング」のスポーツコーナーにゲスト出演しました。
masaは、王さんを尊敬し、草野球でも左で一本足打法のマネをしていたぐらいで、バリバリの巨人ファンでしたが、他チームで好きだった数少ない選手の一人が慶彦氏だったので、彼の発言に大いに注目しました。
張本勲氏が、慶彦氏に、「スイッチ(左打ち)を習得するためにものすごい回数の素振りやったんでしょう?」と、ゲストを立てるフリをしました。
張本氏は現役時代は慶彦氏のライバル球団(巨人)所属だったわけで、彼の練習量など直接伺い知ることはできないはずですが、そこは打撃のレジェンドですから、単なる社交辞令で言ったはずはありません。
で、問題は慶彦氏の回答なんです。
「左打者が10年かけて振ってきたのと同じ回数を1年で振ればいいだけですからね」
と、さわやかな笑顔で言い放ちました。
はっ? なに言っちゃってるの、おっさん。
プロ野球に入るような野球少年の10年分のスイング量なんて、100や200じゃききませんから。1000は軽く超え、1万回にも届くかという回数でっせ。。
その驚愕の発言に衝撃を受け、そのあとのトークはあまり憶えておらず。
慶彦氏が、機動力野球を掲げる古葉監督率いる「赤ヘル軍団」の核弾頭として活躍していたころの人気は、今のカープの”菊・丸”よりはるかにすごかった。レコードも出していたらしいし。アイドルに近いといっても過言ではないぐらいの。
masaの記憶では、強い広島カープで功・走・守に活躍したかっこいい選手。
慶彦氏のグラウンドでの活躍ぶりをテレビで見ていた当時のmasaには、スイッチ転向への苦労など、知る由もなかった。
走力以外は並み以下だった
「赤き哲学」にも書かれていますが、彼の野球人生は破天荒なもので、アイドルなみの人気ぶりや、女優との浮名を流す、フロント批判で干される、野球のプレイ以外でも話題性のあった人です。wikipediaでも解説されています。
それよりも「赤き哲学」で初めてmasaが知って驚いたのは、慶彦氏は甲子園での走塁のよさだけでスカウトが評価し、広島カープにドラフト指名されて入団したということでした。
ピッチャーで4番だった慶彦氏は、走力を活かすために入団早々、野手に転向させられるのですが、プロの変化球をバットに当てることすらできず、やったことのない内野守備も当然こなせず、1年でクビを覚悟したとのこと。
それでも、右打者として2軍で成績を残し始めてきた3年目に、古葉コーチ(のちに監督)から、スイッチヒッター転向を勧められた。
レギュラーとなるためには早く打てるようにならなければならない。冒頭でご紹介した、「左打者が今まで振ってきたのと同じ数を1年で振る」生活が始まったわけです。
自伝には、「指がバットから離れなくなる」とか、「彼女の家に泊まっても2時間ほどリビングで素振りしてた」とか、にわかに信じがたいエピソードの数々。
守備は、自身ではうまくならなかったと回想していますので、masaの記憶にある、「攻・走・守」揃った内野手の筆頭という印象は、根拠薄弱なものになりました。
スイッチヒッターの野手としては、松井稼頭央(かずお)選手の方が、3要素すべてにおいて慶彦氏を上回っているというのは定説だと思います。
確かに松井選手も凄い。彼を超える日本人スイッチヒッターはしばらく現れないでしょう。
でも、masaにとって、慶彦氏はレジェンドでありつづけます。
さきほどご紹介した「球辞苑」という番組で、慶彦氏は、
「(練習など)飽きないんですよね」
とまた笑顔で言ってました。
走力以外は凡庸だった氏の最大の才能が「飽きない」ことにあったのだと。
加えると、これも自伝で初めて知りましたが、
これから走力を活かしてレギュラーを取ろうという20歳のときに発症した右膝の故障。医師からは選手生活を諦めろと言われた位の故障を抱えたまま現役18年を続けたことも。
30年以上破られていない慶彦氏の「33試合連続安打」よりも、
日本2位(1位はレジェンド 福本豊氏)の「盗塁死」の数。
盗塁成功数は日本5位ですから、慶彦氏がいかに盗塁に積極果敢に取り組んだのかを示す記録です。
いつしか、慶彦氏がコーチとしてカープのベンチにいる日が来ることを祈って。
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