masaです。令和元年の記念として、「鬼経理 百の掟」と題した記事を投稿していきます。間に別の記事は入りますが、令和元年のうちに”其の百”まで完遂します。掟(おきて)と言ってはいますが、masaが長年の経理実践で得た教訓、反省が中心となります。経営者層から経理事務担当さま迄広く伝えたいことを書いていきます。
今回は、其の一「五未(ごみ)をなくせ」をお届けします。
五未(ごみ)って何?
ビジネス・プロセス上で発生する、望ましくない状態を”未●●”という単語で5つに集約したものです。廃棄物いわゆるゴミにひっかけています。
ビジネス・プロセスとは、企業間取引(B2B)の場合は、
受注→仕入→納品(検収)→請求→入金
ビジネス・プロセスで発生するゴミはすぐに片付けましょう!というメッセージです。原則、ゴミが発生しないように社内に「仕組み」化すること、もし発生したら早急に処置することが大事です。
ではひとつずつ解説します。
1.未契約
顧客へ商品サービスを納品する前に、商品種類や数量、納品場所、価格、支払い条件などを予め顧客と合意します。この合意のことを”契約”と呼ぶわけですが、契約のないまま納品・サービス提供を行ったあとに、個々の前提条件の相違や、場合によっては発注そのものの存在を顧客が否定してきたらどうなるでしょうか?顧客から、品違いによる返品、納期遅延による損害賠償を請求されるリスクがあります。個別受注ビジネスの場合、特に、顧客からの発注事実を示す正式なエビデンスを納品前に受領しておくことは、不可避となります。
未契約のまま計上された売上は、会計記録として不安定、というよりは未確定の性質を持ちます。会計上の売上取引として記帳する時点で、契約の存在があることは前提となりますので、未契約のまま売上計上してしまうと、その実在性が保証されていない点で、うその売上 になる可能性があります。
契約は口頭やメモ書きでも法律上は成立するのかもしれません。しかし、書面や改ざん不能な電子データで合意内容を保管しておくことが、どのビジネス形態でも必須です。
2 未納品(未完了)
契約に定められた義務を果たすために、商品を納品したり、サービスを提供したりします。しかし、何らかの原因で納品やサービス提供が期日までになされていなかったとしたらどうなるでしょう?上記1の未契約と同じで、最悪は顧客から損害賠償を請求されるリスクがあります。
さらに、未納品でより先に請求書を顧客に提出していたらどうなるでしょう?請求書発行を根拠に計上された売上は、うその売上 となります。
3.未請求
今度は、納品が完了しているのに、請求が漏れている場合です。納品時に売上を計上する場合には、売上げたのに代金が振り込まれない(未入金)こととなります。また、請求書発行を根拠に売上計上する場合には、未入金かつ未売上の状態となります。納品時に請求漏れとならないような事務フローの仕組み化が必須となります。
納品完了しているのに売上計上が漏れているということは、売上計上の網羅性が欠けているだけでなく、利益も実態を正しく表示していないことになります。
4.未検収
納品後に、顧客が検品をするケースがあります。このとき、納入はしたが検品で不合格となった場合、返品再納品になります。検品が済んでない状態では、返品再納品リスク、その派生として未入金となるリスクがあります。
顧客の検収合格を確認しないまま売上計上すると、不合格差し戻しとなっているのに、先に計上されていることになり不適切です。売上計上にあたっては検査合格のエビデンスの入手が不可避となります。
5.未入金
契約、納品、検収、請求全て正当に完了していて、代金が期日までに支払われないことがあります。事務手続き面では、顧客が請求書を紛失した場合、発送事故で届いていない場合もまれにありますが、多くは、顧客の支払の締めに請求書の到着が間に合ってなかったことが考えられます。売上代金が未入金のままでは、商品の仕入れ代金の支払が先行し、会社の資金繰りに影響きたすリスクがあります。さらに、実態面として怖いのは、顧客の資金繰り悪化、もしくは、営業担当者の着服といったリスクもあります。
代金入金は、売上計上の要件ではありません。期日に未入金であっても売上計上を取り消す必要はありませんが、代金の全額もしくは一部が回収されないのはビジネスとして問題だし、期末で「回収懸念債権」と認定される場合には、決算で貸倒損失の引当計上を余儀なくされます。
まとめ
上記の、五未(ごみ)は、もともと無いに越したことはありません。しかし、現実の実務で、全てを完全になくすことは困難です。特に、5番目の「未入金」は顧客側の事務ミスで割と頻繁に起こるものと経験上言えます。ほんの些細なレベルの行き違い、伝達漏れ、その他のヒューマンエラーで簡単に発生します、これも長年の経験で何度も見てきました。
経理部門もしくは経理専任者がいるから大丈夫だ、と思っていますか?よほどの小規模ならそうかもしれませんが、たいていの場合、経理部門だけでは根絶できません。受注、仕入、納品、請求、回収 というプロセスを各部署で分担している状況において、ビジネス・プロセスに関わる全ての部署が連携することは絶対条件です。
・プロセス間の前後逆転が起きない・例外が常に検知され、当事者に周知され、適時適切に処置される
経理部門を中核として、ビジネス・プロセスの最適を実現するための「仕組み化」が必要です。